数年前は売電価格が高く、新築時に太陽光パネルを付ける方が多かったですが、
2020年9月現在、売電価格の大幅低下により、太陽光パネルを設置するメリットがあるのか分からなくなってきました。
新築計画時に太陽光パネルを設置するか迷う理由として、投資としての側面を考えた場合、プロの方でも付けた方が良いという意見と付けない方が良いという意見の両方があり、意見がバラバラです。
我が家は2013年に3kWの太陽光パネルを設置していますが、最低限の採算シミュレーションでプラスになると判断し導入に至りました。
設置年 | 2013年 |
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パネルメーカー | Sharp |
容量 | 3kW |
売電価格 | 38円 |
年間発電量 | 3,000kW |
屋根形状 | 寄棟 |
我が家の寄棟屋根の為、太陽光パネルの容量がかなり制限されてしまいます。
切妻屋根の方が効率良く載せられますね。
当時、トヨタホームでは太陽光パネルのキャンペーンを実施しており、3kWまでならば設置費用50万円(全て込み)という条件でしたので、5年以内で元がとれると判断し導入に踏み切りました。
正直な所、ここの設置費用が通常価格(1kWあたり50万円×3kW=150万円)だった場合導入は見送っていたと思います。
今回は、これから太陽光パネルを設置しようと考えている方に注意すべきポイントと導入判断のポイントを解説します。
始めに結論だけを言ってしまうと、太陽光は付けてはいけない訳ではないですが、家づくりにおける優先順位はかなり低くすべきであると考えます。
・太陽光発電を検討している
・2020年の太陽光発電事情は?
・太陽光発電はお勧め or お勧めでない?
太陽光パネル設置の優先順位を低くする理由
・投資対効果が良くない
・建物に制限が掛かる
・屋根に重量物を載せることで耐震性が低下する
・余分なメンテナンスコストがかかる
以上3つの理由からどうしても優先順位は低くなってしまいます。
投資対効果が良くない
太陽光発電を投資と考えた際に、現在の売電金額はとても低く、投資としての効果が薄くなっています。
10kW未満の売電価格の推移
2009年 | 48円 |
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2010年 | 48円 |
2011年 | 42円 |
2012年 | 42円 |
2013年 | 38円 |
2020年 | 21円 |
売電金額は設置する年によって決まっています。
ひと昔前は1kW当たり40円以上でしたが、2020年は21円と半分まで下がっています。同じ発電量でも、売電する金額が数年前と比べ半分になっているため、売電収入も半分になってしまいます。
太陽光パネル自体の価格や施工コストは下がり、性能や耐久性は高くなっていますが、それでも収入が半分になってしまうという点はそれらを加味しても金額換算すると厳しい状況と言えます。
また、国や市からの補助金も貰えなくなりましたので、積極的に導入する機会が減ってしまいました。
以上の理由から、屋根に載せられるだけ載せて、売電収益を得るという考えは今ではやめた方が良いと思われます。
建物に制限が掛かる
太陽光パネルの発電効率をフルに生かしたい場合、太陽光パネルを南側に向けて30度位の角度で設置するのベストですが、電柱や電線、隣の家の影があると発電効率はかなり落ちてしまいます。
太陽光パネルは、同じ回路内でのパネルであれば影ができ少々発電効率が落ちても問題ないのですが、複数の違う回路内のパネルに影ができ発電できなかった場合、その回路全体に影の影響を及ぼしてしまいます。
【図1】発電効率低下大
【図2】発電効率低下小
例えば、1回路3枚で3回路(水色・緑色・黄色)のパネルが全部で9枚あったとして、図1のように各回路のそれぞれ1枚だけが電柱や電線の影ができたとすると、この3枚分だけの発電効率が落ちる訳ではなく、大幅に発電効率が落ちてしまいます。
逆に図2のように同回路内での影で発電効率が落ちた場合はそのパネル分だけの低下で済みます。
影で太陽光パネルの発電量がどれくらい落ちてしまうかは下記ページがとても参考になります。
周りの環境で発電効率は大幅に左右されるため、ただでさえ良い土地を探すのが大変な上に、エリアや金額の他にプラスアルファで影の影響が無いか等も気にしていく必要が出てきます。
後からマイホームの周囲に家や電柱が建ったりすることは、普通に起こりえることですので防ぎようがありません。
当然ですが家の屋根も南側に向け傾けて設置しないといけないため、建物のデザインにも制限がかかってしまいます。
屋根に重量物を載せることで耐震性が低下する
あと、太陽光パネルという重量物を屋根に載せることになるため、建物の耐震的に不利となります。
基本的に地震で建物が倒壊するときは、だいたい一階部分が崩れて倒壊するというケースが多く、二階部分はそのまま下へスライドする形で残ります。
その原因としてはこの一階部分に二階建物の荷重と屋根の荷重が掛かっている為、一階部分が凄い負荷で支えていることになります。
さらに太陽光パネルを載せることによって、載せる量にもよりますが平均して300kgくらい荷重が余分に掛かってくるため建物の耐震性が必然的に不利になってしまいます。
そのため同じ耐震性能の建物でも太陽光パネルが載っているか載っていないかで不利になることは避けられません。
その点、トヨタホームの鉄骨ラーメン構造ならば耐震性が非常に高い為、その心配はありません。
余分なメンテナンスコストが掛かる
太陽光発電装置は太陽光パネルとセットで「パワーコンディショナー」という20万円位する装置をセットで付けます。これは平均10~15年で故障または能力が大幅低下するため、それを維持するためのメンテナンスコストがかかってきます。
パワーコンディショナーは、太陽光発電で創っただけでは使えない電気を家庭で使える電気に変換するだけでなく、太陽光発電システム全体を効果的・効率的に稼働させるなど、重要な働きを担っています。
引用元:https://rakuene-shop.jp/columns/2426/
また、太陽光パネルの火災保険にも入ることになり、通常よりも余分な費用が掛かり、さらには最終的に撤去する際にも屋根から降ろしたり撤去する費用等、様々な費用がかかってきます。
住宅用の場合には屋根に設置するのが基本の為、屋根材をいためたり雨漏りのリスクも当然出てきます。
屋根材の耐久性も短い物だと10年、長い物でも30年くらいの為、塗装の塗り替えをしたり屋根を取り替えたりする工事の際には、太陽光パネルを一時取り外したりしないといけないのでそういった費用も余分に掛かってくることを考えておく必要があります。
以上の4つの大きなマイナスポイントがあることで、どうしても優先順位が低くなりがちです。
発電を増やすのではなく消費を減らすという考え
どうしてもマイナスポイントが多い2020年の太陽光発電事情ですが、一つ視点を変えてみて「エネルギーを作ることを考える」よりも「家でのエネルギー消費を減らしていく」という考えを検討してみてはどうでしょうか。
太陽光パネルは製造時に温室効果ガスが発生してしまう為、環境負荷となっています。
いっそのこと太陽光パネルを設置せずに、エネルギー消費を削減したほうがはるかに環境負荷低減になるのではないでしょうか。
太陽光パネルを付けるのに100万円ぐらいかかるとしたら、その100万円分を家の性能を上げるためにかけてあげたほうが効果的ですよね。
例えば、断熱性能、保温性能、機密性能をお金を掛けて上げた方がよっぽど効果的だと思うのです。
家の性能が上がるということはエアコン等の効きがよくなり、光熱費が抑えられて住環境が良くなります。
逆に、太陽光発電でどんどんエネルギーを作っても、家の性能が低かったら、無駄なエネルギーを消費してしまうので意味が無いです。
太陽光パネルは家を建てた後からでも設置することができますが、耐震性能・断熱性能・気密性能という家の性能は家を建てた後から付けることは難しく、最初から検討しておかないと出来ない内容です。
太陽光パネルを設置できる条件
2020年現在においては下記条件を満たしている場合に設置を検討してみてください。
【条件1】高性能な家
耐震性能、断熱性能、気密性能、保温性能が高い家であれば、エネルギー消費が抑えられ太陽光パネルを付けるメリットが出てきます。
【条件2】周りの環境が良い場所
周りに影となる光を遮る建物等が無ければ条件クリアですが、土地の南側が空き地や駐車場の場合、いつ障害となる建物が建つか分からない為、注意が必要です。
当然ですが周りに大きな日陰となる高い建物が建っているところではお勧めしません。
【条件3】設置費用が安い
設置費用が安いことは一番重要なポイントです。
太陽光発電を投資と考えた場合、このイニシャルコストをいかに安く出来るかが大きなポイントになってきます。
検討項目
・火災保険の費用
・メンテナンスの費用
・パワーコンディショナー交換費用
・最終的なパネルを撤去する費用
・劣化による発電効率の低下
以上の項目を加味した精密なシミュレーションを行い。十分な回収金額が見込めるようであれば太陽光パネルを設置しても良いと判断出来ます。特に最初の設置費用(初期投資)が低くないと、設置してもなかなかプラスにならず、マイナスからなかなか抜け出せない状況に陥ります。
逆に、この費用を加味したシミュレーションを甘くしていると結果的に「何のためにつけたんだ?」という後悔だけが残り、設置した意味が無くなってしまいます。
太陽光パネルを載せる場合、過去も現在も、以上全ての条件をクリアした場合に限り付けるべきであると考えます。
・高性能な家
・日照条件
・安く設置出来るか
これら全てクリアして、シミュレーションしても十分プラスに転じるようであれば、設置を検討に入れても良いですね。
基本的には太陽光パネルはとてもエコで地球環境に良いため(製造時に温室効果ガスが発生することは無視したとして)積極的に設置をしていきたいものです。
太陽光パネルの注意点
太陽光パネルを付ける場合は、家を作る際に計画しましょう。
後から設置の場合、家の状態によっては付けられなかったり、足場代等で費用が余分に掛かってしまいます。
太陽光パネルの訪問販売は避けるべき
太陽光パネルを扱う訪問会社の場合、売ったらそれで終わりの売り切りの会社が多く、儲からなければ事業を撤退する可能性もあり、設置後十分なサービスが得られないばかりか、会社倒産の可能性もあり、サポートが全く受けられないという状態にもなりかねません。
太陽光パネルを設置する場合は、家を建ててくれたハウスメーカー・工務店に頼むのが基本となります。
パネルメーカーは拘ること
太陽光パネルメーカーは何十種類とありますが、メーカーによって性能や保証の内容もまちまちなので安いからという理由だけで選ばずにトータルで確認し、費用対効果に見合うかを見極めて決めてください。
適正なパネル容量
太陽光パネルを設置するのが決まったとしても、大容量パネルを設置するのではなく、自分たち家族で消費する分だけの容量を付けることをお勧めします。
一般の家庭の消費電力は4kWから6kW位ですので、それくらいのパネルを載せるのがお勧めです。
理由として余った電気を売るのは2020年現在21円(容量が10kW以下の場合)にしかならず旨味がありませんが、自分で消費する場合にはその分電気を買わずに済むため、自己消費分に太陽光発電の電気を充てる場合は、実質1kW当たり30~40円の節約になります。
蓄電池について
2020年現時点でも蓄電池の性能はそこまで高くないため、この辺が改善されれば太陽光パネルの可能性はもっと広がると思います。我が家の場合、2013年当時の蓄電池は最低でも200万円以上した記憶があり、全く設置する意味が無く検討はしませんでした。
まとめ
太陽光パネルは設置するタイミングや環境に凄く左右されるので、条件に見合った場合のみ検討するのが良いですね。
一番駄目な例としては、明確な根拠を持たず、周りの人や担当する営業マンがとても良いと言ってるから付けるという、とりあえず設置してみて後悔するパターンは一番やってはいけません。
大切なのは色々な人の話を聞いたり、自分で調べたりして、自己の費用シミュレーションで問題無いことを確認し、自分で設置する根拠を判断して決断することが大切です。そうすればもし何か問題点があったとしても後悔は少なくなるはずです。
ざっと私の意見をまとめてみましたが(分かりにくい文章ですみません)、これから太陽光パネルをつけるかどうか迷っている人に少しでも参考になれば幸いです。
太陽光発電を見積してみる(リンク)
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