ハウスメーカーとの打ち合わせ時、形状のみ重視して他の項目(表面材、下地など)はなんとなく決めてしまう屋根の種類ですが、屋根はとても重要で何も考えずに選んでしまうと耐久性やメンテナンスコストの問題で後悔してしまう可能性があります。
そこで今回は屋根の役割と重要性を紹介します。
屋根の形状や軒の長さなど、家づくりの方向性を決める手助けになれば幸いです。
・屋根の種類で悩んでいる
・屋根の表面材は何を選べばいいか分からない
・雨漏りに強い屋根は?
屋根の重要性
普段あまり見ることがない屋根ですが、下記のように家を守ってくれる非常に重要な役割を担っています。
・雨風や天災から建物や人を守ってくれる
・日射断熱で構造を守ってくれる
・室温調節をして快適にしてくれる
・遮音性で室内を静かにしてくれる
・デザイン性で見た目を良くしてくれる
台風の時に屋根材が飛んでしまったり、地震の時に屋根の重みで建物が潰れてしまったり
屋根から雨漏りして構造材が腐って劣化してしまったり、こういったトラブルが起こらないようにするため、屋根の選び方はとても重要になってきます。
屋根の確認ポイント
屋根というとまずはその形状を気にされると思います。
勿論、屋根形状の選択は重要ですが、どんな素材の屋根にするのか、そしてその下地をどのように施工するのかを合わせて考え選ぶことが重要となってきます。
下地処理については、指定することが難しいと思いますが、どういった内容で施工を行うのか確認しておいた方が良いでしょう。
・屋根の表面材
・屋根の形状
・下地の作り方
今回は上記項目3点について確認してみましょう。
屋根の表面材について
まずは表面材(屋根材)について紹介します。
屋根の表面材の種類は大きく3つに分けることができます。
・スレート
・瓦
・ガルバリウム鋼板
日本ではスレートのシェアが最も高く、最近ではガルバニウム鋼板を使った屋根が人気となっています。瓦は少しずつ減少している傾向ですが、大手ハウスメーカーでは瓦の採用が多いです。ここでいう瓦は粘土瓦を指します。
スレート瓦について
セメントと石綿(アスベスト)を高温高圧下で養生・成形した板状の石綿スレートに着色剤で着色したものを「化粧石綿スレート」といいます。
粘土瓦に比べ非常に軽量で安価であることから屋根材として普及しておりますが、近年では環境問題への配慮から石綿の代わりに人工繊維や天然繊維を使用した無石綿の化粧スレートが普及しています。
引用元:https://www.nakayama-saiko.com/slate
参考:https://riverstone-roofing.com/basic/20150127_sure-to/
1.ガルバリウム鋼板とは
ガルバリウム鋼板はアメリカで開発された金属系サイディングボードのひとつで、現在では日本の住宅の屋根材や外壁材に多く採用されています。
鋼板を基材にアルミや亜鉛から構成されており、従来の亜鉛メッキ鋼板よりも耐久性が高いのが特徴です。
ガルバリウム鋼板の組成:アルミ55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%
ちなみに「ジンカリウム鋼板」という金属素材がありますが、ガルバリウム鋼板との組成の違いはほとんどなく、性能もほぼ同じものになります。
引用元:https://gaiheki-com.com/cms/useful/post-1283/
屋根材比較
スレート、ガルバニウム鋼板、瓦の3種類の特徴を下記比較表にまとめてみました。
スレート | ガルバリウム鋼板 | 瓦 | |
メリット | 価格が安い 色やデザインが豊富 薄型でスッキリ |
軽量で耐震的に有利 防水性が高い |
丈夫で長持ち メンテナンスフリー |
デメリット | 割れやすく低耐久 メンテナンス頻度が多い |
断熱性が低い 通気性がない 雨音が大きい |
価格が高い 重いため建物に負担が掛かる |
断熱性 | △ | △ | ◎ |
耐風性 | △ | ◎ | ○ |
耐震性 | ○ | ◎ | △ |
防音性 | ○ | △ | ◎ |
費用 | 4,500~8,000円/㎡ | 6,000~9,000円/㎡ | 9,000~12,000円/㎡ |
塗り替え周期 | 15年 | 30年 | 60年 |
【スレート】
スレートは3種類の中では一番安価で、デザインがシンプルでスッキリしているため安定した人気があります。瓦と比較すると半分程度の軽さのため、耐震的に有利となります。
デメリットは軽いがゆえに強風に煽られて飛ぶ可能性があることと、15年の1回の塗り替えが必要になるなど、メンテナンス頻度が高くなってしまいます。
【ガルバリウム鋼板】
ガルバリウム鋼板がよくつかわれる理由としてその軽さが挙げられます。同面積の瓦と比べると10分の1程度の軽さとなり、耐震性でとても有利となります。
また、見た目がシンプルで様々な形の建物と相性が良く合わせやすいです。
屋根材自体に断熱性能・防音性能は無いため、下地を工夫する必要があります。
【瓦】
瓦は昔から採用されているもので、洋瓦や和瓦など種類があり、家のテイストに合わせて使い分けることができます。断熱性と防音性が高いのも特徴です。
耐久性は最もあり、塗り替え時期はなんと60年に1回で済む計算になるため、ほぼメンテナンスフリーといっていいでしょう。
但し、3種類の中では一番重いので、木造住宅の場合は特に耐震設計に注意を払う必要があります。
我が家の場合
我が家では瓦であるスーパートライ110を採用しました。
愛知県産の三州瓦というもので粘土瓦に属します。
トヨタホームの場合、鉄骨造で家の構造体が丈夫ですので、重さのある瓦を使ったとしても耐震性は問題無いと判断しました。
例え木造住宅であっても、基本は屋根の重量に応じて構造設計されるため、耐震性は問題ないことがほとんででしょう。
トヨタホームの場合、瓦とスレートを選ぶことが出来ますが、ガルバリウム鋼板はラインナップが無く選ぶことが出来ません。
三州瓦:https://www.try110.com/kawara/about.html
スーパートライ110:https://www.try110.com/product/kawara/type1/
カタログ:https://www.try110.com/archives/017/pdf/type1(1302).pdf
屋根の形状
次に屋根の形状について紹介します。
種類は多数ありますが、一般的なものは「切妻」、「寄棟」、「片流れ」、「陸屋根」の4種類です。
【切妻】
切妻屋根は雨漏りリスク、将来発生するリフォーム工事費用を抑えることが出来ます。
また、断熱性能も確保しやすいため住宅が快適になります。
【寄棟】
屋根が家の四方を守ってくれるので外壁への影響を抑えられます。
見た目は重厚感があり、迫力があります。
軒の出をしっかり確保していれば紫外線や雨水から外壁が保護されます。
雨漏りリスクは複雑な形にならない限り問題ないでしょう。
【片流れ】
片流れ屋根は屋根面積が小さく、雨樋や棟板金が短いため、初期費用を抑えることが出来ます。
屋根一面に効率良く太陽光パネルを載せることが出来るのも特徴です。
屋根の頂点側の外壁がむき出しになってしまうため、そこからの雨漏りに注意です。
【陸屋根】
陸屋根は屋根上のスペースをバルコニーやベランダ代わりのスペースとして使うことが出来ます。
勾配のある三角屋根と比べて屋根面が平らなことから、清掃や補修工事を行う時に作業がしやすく、足場も必要ない場合があるためコストも少なくできます。
陸屋根は平らなことから三角屋根に比べると水はけが悪く、しっかりと防水処理をしておかないと雨漏りする可能性があります。
【参考にさせていただいたサイト】
https://yuko-navi.com/roof-shape-type
それぞれの屋根形状で特徴がありますが、コストに関しては多少の違いはあってもそこまで気になるものではありません。
屋根の形状で大きく変わってくるのは雨漏りのリスクです。
屋根防水の仕組みは一次防水と二次防水に分けられます。
一次防水は屋根材で防水するイメージで、二次防水は屋根材の下側となる部分を防水シートで防水する感じです。
ガルバニウム鋼板の場合は1枚の長尺、一枚物の板金はっていくので防水性能が高くなりますが、スレートや瓦に関しては一次防水としての性能はほとんどありません。
そのため二次防水をしっかり施工することが大事になってきます。
複雑な屋根の形状だとどうしても隙間が出来やすくなり、雨漏りのリスクがふえてしまいます。
雨漏りのリスクが高い順
①陸屋根
②片流れ
③寄棟
④切妻
①陸屋根が最も雨漏りの危険性があります。
勾配が無い屋根の為、水が溜まりやすくなりそれだけ雨漏りのリスクが高まります。
また、屋根の勾配でも雨漏りリスクが変わってきます。
屋根の傾斜が緩やかであるほど、雨が屋根に残りやすくなりますので雨漏りのリスクが高まります。
②片流れと③寄棟は同じ位の比率で、④切妻が一番雨漏りのリスクが少ないでしょう。
但し、最近多くなった軒ゼロやトップライト(天窓)は雨漏りのリスクを高めてしまうので採用には注意が必要です。
【軒ゼロ住宅】
雨は屋根以外にも、外壁と屋根のつなぎ目からも侵入してきます。
雨漏りリスクを下げる為に屋根の軒は外壁をから50cm以上は出した方が良いでしょう。
保険事故について
年々、ゲリラ豪雨(一時間に50mm以上の雨)が増えてきています。
保険事故のトップは雨漏りでその割合はなんと90%以上。
出来ることなら雨漏りリスクの低い形状を選びたいところですが、しっかりと施工がされていれば問題ないです。
下地の作り方
最後は下地についてです。
下地の作りに不備がある場合、どれだけ高級な屋根材を使用していても意味がありません。
下地は二次防水の要となり、絶対に浸水を許してはいけません。
屋根材、形状がどんなものでも、下地の作りがしっかりとしていれば雨漏りは起こらないはずです。
・屋根断熱
・気密処理
・通気の確保
下地については、以上3つの項目が大事となり、屋根断熱、気密処理、通気の確保がしっかりと出来ていればどのような屋根にしても問題有りません。
メーカーとの打ち合わせの際は屋根の表面材や形状だけの話だけでなく、断熱方法、気密方法、通気方法かの3点を必ずを確認するようにしてください。
それらがしっかりと配慮されて施工されているかしっかりと監視することで、雨漏りのない安心な家が作られます。
まとめ
家づくりにおいて、非常に重要な屋根。屋根材やその形状に拘るのはもちろんのこと、下地の作り方についても意識を向ける必要があります。
屋根形状についての個人的な感想ですが、重厚な見た目の高級感を出したければ寄棟屋根で、屋根形状に特に拘りが無く、雨漏りのリスクを避けたければ切妻屋根、ソーラーパネルをたくさん載せたいといった場合は片流れを選ぶのが良いでしょう。
屋根で後悔しないために、屋根の表面材と形状のメリット・デメリットをしっかりと把握し、メーカーがどのようなコンセプト(断熱・気密・通気)でどんな下地の作り方をするのか、担当者に確認を行うようにしてください。
とにかく下地処理がしっかり施工されていれば、屋根材や形状にそこまで敏感になる必要が無くなります。
トヨタホームなどの鉄骨造住宅においては、構造体が丈夫で耐震性に余裕があるため、屋根材は高耐久でほぼメンテナンスフリーな瓦をお勧めします。
コメント